空っぽ? いえいえ、詰まっておりますよ〜 / 8ninriki.jp
Review


2015.07.16
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空っぽ? いえいえ、詰まっておりますよ〜


writer
新田崇博

建築:ymg -はじまりの空っぽ- / 福岡県筑紫野市

設計:人の力設計室一級建築士事務所

 

初めてインスタグラムで、この住宅の写真を見た時、心踊った。

床、壁、天井全てが合板ではないか・・・

一瞬、まだ下地なんでしょと目を疑いつつ、細部をよくみると仕上げなのだ。

でも不思議と合板の荒々しさや安っぽさを感じない。

 

この秘密はなんなんだと、私はモヤモヤと建物の完成を待ち続けることになった・・・

 

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hitochika インスタグラムより

 

と、言うわけで、過剰な期待をもちつつ、八人力メンバーである人の力設計室「 ymg -はじまりの空っぽ-」のオープンハウスへ行ってきた。

 

ymgは静かな住宅街の奥の方の更に奥、袋小路の林の中に現れた。

まずは外観から、

 

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ガルバリウム鋼板を使ったシンプルな片流れの外観。

 

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おや、窓一つ一つに小庇が、丁寧な仕事でございます。

 

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おやおや、設備機器にも小庇が、中々見慣れない風景・・・
小林さんに伺うと、「器具の持ちも全然変わりますし、小庇があることで、器具にも居場所ができるのです。」

なるほど、やさしさが溢れています。

 

さて、いよいよ室内へ、

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ゾワゾワ・・・(鳥肌が出た音)

不思議な感覚だ。

合板が荒々しくその姿を見せてやがら・・・ない。

 

やはり、ただの合板仕上げでは無かったようだ。

合板達は柱、梁の中にトリミングされ行儀良く並んでいて、更に薄い白の塗装で構造材、古建具もろとも化粧していなさる。

そして、驚く事に合板達の繋ぎ目は、家中を途切れる事無く続いているのだ。

 

本来下地や構造に使われる合板を、設計者が家の中に丁寧に配置し、それを職人が細心の注意をはらい、丁寧に貼っていったのだろう。

まずは、その丁寧なディテールを観察し、少し落ち着いて食堂と居間の間にある段差に腰掛ける。

一息ついて、室内を見渡すと不思議な感覚に陥ったもう一つの理由に気がつく。

 

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天井高である。

平屋でも、2階建てでも、1.5階建てでもない、1.25階建てとでも言うべきちょっと高めな空間ボリューム。

その中につくられた、土間のような廊下や小上がりの和室のようなしつらえや段差。

そこにはセオリーに惑わされない、人の感覚に近いスケール感があるのだろう。

自然と腰掛けたくなるし、体操座りしたくなるし、寝転がりたくなる。

 

そして、小林さんが一言

「良い体操座りですねぇ〜。」

 

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そこ褒めるとこですか・・・?(笑)

とつっこみつつ、この感覚がこのスケール感を生み出したのだと妙に納得してしまう。

 

「この家は空っぽで、これからクライアントが作りあげていくのです。これからもずっと工事中です。」

 

んっっ。確かに、釘やビスで加工しやすい合板でできているが、私から見ると、からっぽでは無く、完成されておりますよ。

この空間を引き渡して、どんどん変えていってくださいね♡は、ちょっと酷でないかい?

私だったら、考え抜かれたこの空間に穴を開けるなんて、物怖じして、罪悪感さえ覚えてしまいそう。

 

そんな事をモヤモヤと考えていたら、クライアントのご夫婦がお越しになる。

挨拶も早々に、手作りのベンチが搬入される。

 

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座ってみる・・・とても心地がよい・・・

 

ご夫婦は「ゆっくりしていってくださいね。」と笑顔で言いながら、早々と別の作業を始める。

物をかけるフックやカーテンを取り付けるためのワイヤーなど、取り付けだした。

 

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その風景はもう工事中である。

それらはとても良くできていて、空間によく合っている。

そして、その様子をみて、一緒に楽しんでいる人の力設計室のお二人。

 

そんな風景をみていると頭の中のモヤモヤは一瞬にして吹き飛ばされる。

このクライアントあっての空っぽなのである。

設計者が質の高い空間という宿題を与え、それを物ともせずスラスラと解いていくクライアントの技量。

 

 

なるほど、詰まっているけど空っぽだ!

まさしく、人の力設計室のお二人と、クライアントの信頼関係がそのまま形になっていく、空っぽのはじまりである。

 

作っているのは建物だけど、結局はそれに関わる人で、その空間の価値は変わるものだなぁ〜

 

 

 

 

 





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