若葉の舞台-関係性の美学 / 8ninriki.jp
Review


2016.01.9
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若葉の舞台-関係性の美学


writer
矢橋徹

現在、熊本市で小さな公共空間の設計を行っています。

敷地は熊本市東区若葉、中心部から少し離れた親水公園・江津湖公園と築30年ほどが経過している

住宅が立ち並ぶ住宅地、それと美しい稲穂が広がる田畑、この3つの特性の結節点となる場所にあ

ります。

航空写真

クライアントの経営する店舗があり、その店舗に付属している使われなくなったテラスを何か地域

に開かれた場所として活用できないかとの依頼を受けて始まりました。

まずそのテラスの置かれている地形的特徴に注目しました。谷状になった敷地であり、テラスの下部

はオーケストラピットのような形状で基壇のようにRC造のガレージがテラスを支えており、谷の先

には歩道がある奈落のような特性があります。

この地形的特徴は、物理的にも心理的境界を強固にしテラスは宙づりの状態であるものの敷地周辺の

住宅地から公園への散策路として奈落の底が利用されていたり、歩道も同じく公園への行き来に使わ

れ、視点を変えれば様々なアクティビティが交差する面白い特徴を持っていることも気付きとしてあ

りました。

そこでこのテラスを舞台として名付け、分裂している関係性を修復することを目的としたプロジェクト

として進んでいくことになり、奈落の形状を利用したイベントを開催したり、カフェスペースになった

り、昨年復活した江津湖花火大会の特設ステージになったり、様々なアクティビティを展開できる舞台

とした緩やかなプログラム空間の提案です。

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建築でもない、工作物でもない、何か不思議な存在感をもったスケールの空間が様態として在るような

構築を目指しています。関係性の中に美学としての建築を定着させることで、街の解像度が変わったり、

通りの意味合いが変わったり、建築を通して日常の景色が変わる現象的な操作を「関係性の美学」とし

て建築を考えるうえでキーにしています。

この「関係性の美学」という言葉は評論家ニコラ・ブリオーによる1998年の著作のタイトルでもありま

す。1990年代以降の関係性によって成立するインスタレーションやコミュニティアートをリレーション

・アートとしてまとめたものであり新時代における芸術のパラダイムシフトを評した一冊です。この新

しい芸術のあり方は関係性のもと成立する建築と同系であり、関係性がワンウェイであった芸術と複雑

な関係性を持つ建築がボーダレスに意味づけされることを示唆しています。

現代において複雑化した変数としてある条件(関係性)に対してどのような解法(美学)を見出し、

現象的な存在として建築を位置づけること。

すなわち建築をモノではない、現象として存在させること=「関係性の美学」を日々建築を考えるうえ

で大事にしています。

 

 

 

 

 

 

 





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