小篠邸/安藤忠雄 / 8ninriki.jp
Review


2016.02.20
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小篠邸/安藤忠雄


writer
松澤徹

昨年の話ですが、師匠の建築を見学させて頂いた帰り、安藤忠雄氏の初期の名作『小篠邸』を見学させて頂きました。

オーナーの小篠さんとは、あのコシノヒロコさん。

まだ無名に近かった安藤忠雄氏に依頼したこの住宅は、小篠さんが30年余りを暮らした後、小篠さん自身の作品や、若手芸術家の作品などを展示するギャラリーとして公開されています。

内外共にコンクリート打放し、大判ガラスによる大開口と、安藤建築の定番とも言えるストイックな建築ですが、周囲の緑豊かな環境に絶妙に開き、自然との対話を促すような空間が折り重なる、素晴らしい建築でした。

何より特筆すべきは、光のコントロール。

過去の記事でも書きましたが、建築の設計を営む僕らが、いつも頭を悩ませ、永遠にもがき続けるテーマの、お手本とも言える作品です。

 

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地窓から、植栽の緑と共に柔らかに差し込む光。

 

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暗い通路の先に、スリットから差し込む光のストライプ。

 

 

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途切れること無く続くトップライトから降り注ぐ、時間の移ろいと共に様々な軌跡を描く光。

 

その多様な光の取り入れ方にため息しか出ません。

 

 

 

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トップライトからの光に無粋な枠の影が出るのを嫌い、枠無しのガラス一枚で押えてしまうという、常識では考えられない納まり。技術者として見ると有り得ないと思ってしまいますが、これによって室内に降り注ぐシームレスで美しい光を実現している事も事実です。

 

冬は寒くてスキーウェアで生活していたとか、トップライトから雨漏りしたとか、ネガティブな話も多く聞かれるこの小篠邸ですが、それを補って余りある程の感動を、コシノヒロコさん本人が感じていたからこそ、30年も住み続ける事ができたのでしょう。

 

安藤忠雄という建築家も素晴らしいが、この建築を受け止めたコシノヒロコというオーナーの感性、美意識、寛大さこそ、最も素晴らしいと思える建築体験でした。

 

 

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柱の傷はおととしの・・・・ 小篠家の「せいくらべ」
この家への愛を感じる場面でした。

 

 

P.S.

帰りに、小篠邸よりもずっと後、押しも押されぬ世界的建築家となった安藤氏が建てた兵庫県立美術館にも立ち寄りましたが、こちらはなんというか、迫力はあるのですが、やはりこの小篠邸や、住吉の長屋、光の教会の様な初期の小さな作品群を見た時の感動を得る事はできませんでした。

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ダイナミックな建築ではあるし、部分的に「流石!」と思わせるシークエンスはありましたが。。

 

 

 

 

 





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