再会の旅 –友と故郷と- / 8ninriki.jp
Reserch


2017.03.7
001表紙
再会の旅 –友と故郷と-


writer
小林 哲治

旅の友人が結婚するということで、呼ばれて別府へ一人旅。
彼が予約してくれた古いホテルに着くと、すでに当時の仲間が集まっていた。
みんなと出会ったのはトルコのイスタンブールで、あれから15年の月日が流れている。

 

「なんで大部屋なんだw ドミトリーかいww」

と、予想外の部屋につっこみながら笑うしかなくて、とにかくみんな元気そう。あの時のまんまというか雰囲気が変わってなくて、おかげさまで披露宴は、再会と祝福にあふれた楽しいひと時だった。

 

 

002臼杵

あけて翌日は、みんなでなんとなく大分を巡った。
臼杵から佐賀関そして別府と、石仏、関サバ、温泉の小さな旅路。私にとって大分は、修業時代の20代を過ごした第三の故郷な訳で、その地を30代に出会った旅の友達と歩くという体験は、なんとも不思議な感覚だった。

 

長く旅をすると、人は重くゆったりとした空気をまとうようになる。

移動する車中で彼らのそんな空気を吸っていると、自分の中にしまっていたそれがにじみでてくるようで、少しずつ時間の流れが遅くなっていくのがわかる。なんだろうこの感覚…

 

 

003クロメ

佐賀関では友人の実家に寄らせていただいた。なんと、土間でお母さんがクロメを巻いている。そうか、クロメのシーズンだった。
クロメとはカジメ属のネバネバした海藻で、この時期にしか食べられない美味しいローカル食材だ。特に佐賀関産のクロメは高級で、写真のように奉書型に巻いて出荷されることで知られている。その巻きたてのクロメをお母さんはお土産にと、私達へ持たせてくれた。お母さん、ありがとうございます。

 

私が好物との再会に喜んでいると、「あっ!海に行けるよ!!」と言って、一人が走っていった。

その時、自分の中で何かが、どろっと流れ出るような感覚を覚えた。

 

004海ヘ

道路の下をくぐりぬけて、みんなが嬉しそうに走ってゆく。
その黒く縁どられた風景が、映画のワンシーンのようで見とれてしまった。

ああああ、この感覚、懐かしい。

予定がなくて、行先を場当たりで決めて、寄り道してどんどんずれていく日々。忘れたつもりはなかったけれども、旅先のきままな日常に流れるこの感覚を、私は久しぶりに思い出した。だから、

 

「姉さん、黒ヶ浜に連れてって!お願い。」
この空気を吸った私は、昔のようにわがまま言って、懐かしい海岸へ向かった。別府では新郎新婦が待ってるのだけれど、この感覚のままに身体を動かしてみたい。そして黒ヶ浜に会いたい。

 

005黒ヶ浜黒ヶ浜とは、佐賀関半島の先端にあって、浜辺が蛇紋岩という黒石でできている。だから打寄せる波音は「カラカラカラァ…」と石の転がる音がする珍しい海岸で、修業時代の私は疲れるとここに来て、海をぼーーっと眺めていた。そして自分がつくりたいモノについて考え込む、原点のような場所だった。

 

 

006原点

この時季だと、おばちゃん達がクロメを巻く光景が見られるはず、と期待していたのだが見当たらない。時間が遅すぎたのかもしれない。

 

 

 

と、残念に思って歩いていると、旅の勘が働いた。

ここはもしや…

 

 

007発見

やっぱり。

有り合わせで組まれた囲いの中で、クロメ巻きは静かに行われていた。
そうか、これは風よけの壁だったのだ。よく見ると時計がかけてあったり、スケールといい機能的につくられている。うわあああああすごい!!すごい!!

修業時代の自分が見落としていたものが、今は見えた。たくさんの集落を散策して、設計を重ねてきた結果、この囲い建築の力強さがわかるようになっていた。そうだ、あの感覚の先にはいつも、こういう発見があったのだ。

 

 

今回の旅行は、久しぶりに身体の芯からほぐれることができた。それは旅友と大分のおかげでしかない。旅とはどんなに短くても旅で、そこで出会った人の力と場の力をおすそ分けしていただいて、元気になることができる。

 

 

一週間後、そんな私にもう一人、嬉しい旅友との再会があった。彼は仕事で福岡へ来たついでに、会いに来てくれたのだ。

 

008福岡

仕事合間の短い再会だったけれど、日向ぼっこをしながら一緒にビールを飲んだ。彼はいつもあの空気をまとっているような男で、ふらっと会いに来てくれる。酒の肴に大分での出来事を話すと、うんうんと、頷きながら彼はつづけた。

「旅での出会いってさ、宿での数時間だけだったりするのに、帰国後もこうやって会いたくなるのはどうしてなんだろうね。」

 

どうしてなんだろう。

もしかしたら、あの空気を吸いたいのかもしれない。吸ってあの感覚を思い出したいのかもしれない。





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