中古マンション買ってリノベ。その前に。 / 8ninriki.jp
Review


2017.03.24
RENOVATION_edited
中古マンション買ってリノベ。その前に。


writer
松澤徹

今回は少し硬いですが大切な事、お金と資産価値のお話し。

 

このところ急激に市場を拡げている、中古マンションのリノベーション。

新築マンションに高いお金を出すよりも、中古マンションを安く手に入れ、全てを自分仕様のオリジナルにデザインし直して、世界に一つだけの空間を手に入れる事ができるという事で、特に若い世代に人気が高まっていますよね。価値観の多様化が進み、「より多くの人に受け入れられる」事を目的として設計された、いわゆる「既製品」の様な空間では満足できない人が増えているのかもしれません。

 

我々建築家の仕事も、新築ばかりでは無くこのリノベーションの仕事が占めるウェイトが大きくなって来ています。何もないところから新しいものを生み出す仕事も面白いのですが、価値を失っていた空間に新しい価値を与えたり、空間の持つ潜在的な価値を引き出したりする仕事も、本当にやりがいのあるものです。

 

でも僕らにご相談頂いた時点で、既にマンションを購入されている方が多く、そのマンションが将来的な資産価値に不安のあるものがたまにあって、すこし残念な気持ちになる事があります。

 

人口に対する住宅の数は圧倒的に余っているのに、新築マンションは建てられ続け、売れ続ける。大部分の日本人は、新品こそ正義。新しいものを買う事こそがすばらしいという感覚を持っているので、この市場は無くならない様です。だからこそ、古いマンションはその資産価値を失わない努力をし続けなければいけません。

 

リノベーションの為に中古マンションを買う。オリジナルな空間・暮らしを手に入れる為ではありますが、その資産価値がどんどん無くなって行くものか、時を経ても価値が落ちず、次の世代にも引き継げる様な価値を持つものか、選び方次第で大きく変わってきます。

 

では何を基準に選べばいいのか?気をつけるべき点がいくつかあります。

 

まず1つ目は、立地。

新築が建てられ続けている状況でも、交通の便が良い、教育環境として良い等、立地条件の良いマンションはあまり価値が下がりません。将来的に売却する際にも、その評価の差は大きく出てきます。

 

2つ目は、維持管理の状況。

購入の際気になる事に管理費と修繕積立金の金額がありますが、この金額、特に修繕積立金が安いからと言って、手放しで喜んではいけません。

鉄筋コンクリートとはいえ、建物はメンテナンスフリーではありません。定期的にメンテナンスを行わなければ、コンクリートの寿命は大幅に縮み、生活にもあちこちで支障を来たし、見た目も悪くなり、人が離れていきます。人が離れていくと修繕積立金はなおさら集まらなくなり、更にメンテナンスができなくなる。そして遂にはスラム化して行くという最悪の流れになります。古いマンションをヴィンテージマンション等と呼び、そこに価値を見出す人達が増えています。古いなりの良さがあり、それを損なわない様にする事も大切です。しかし古いだけで維持管理が全くできず、ただボロボロなだけでは、価値は失われてしまいます。

 

3つ目は管理組合の財務状況。

建物のメンテナンスは多岐にわたります。屋根の防水やコンクリート躯体のひび割れ等の補修、外壁塗装の塗替え等を行う「大規模改修工事」。給水管や排水管の取替えや更生などを行う「給排水設備改修工事」。その他電気設備の改修やエレベーターのリニューアル、玄関ドアの取替え、アルミサッシの取替え、インターホンの取替え等々、、、長い建物の一生の中で、上げだしたらキリがない程沢山の改修をしなければなりません。そういった工事を無計画に、いきあたりばったりで行っていたのでは、積立金はあっという間に無くなり、維持して行けなくなります。自分たちの資産を大切にしていこうという姿勢を持った管理組合では、長期的な修繕計画を作成し、それにどのくらいのお金が掛かるのか、今の積立金で足りるのかという検討をしています。それに伴い、修繕積立金の値上げ等も、定期的に行っていく必要が出てきます。それはどこにでもある事なのですが、無計画のまま古くなってしまったマンション程、急激な値上げや、大規模改修に伴う一時金の徴収など、住民の生活に大きな支障を来してしまう程の負担を強いられる場合が多くなります。やっとローンが通って新居を手に入れたかと思ったら、数年後に積立金の大幅値上げや一時金徴収では、家計の資金計画が総崩れになってしまいますよね。

 

長期修繕

これは積立金が極端に安いまま長期間放置され、急激な値上げが必要になったマンションの事例です。

 

中古マンション購入にあたっては、過去の修繕履歴や長期修繕計画書の閲覧を依頼し、建築士やホームインスペクター等、専門知識のある人に見てもらってから購入する事をおすすめします。

 

デザインの力で、空間に新たな価値を付加する事はできます。しかし肝心な建物そのものが価値を失っては、高い買い物を棒に振ってしまう事になりますからね。

 

 

 

ちなみに。。。

マンションの建て替えは、なかなか成立しません。

建築基準法上、敷地には容積率や道路斜線、日影規制等、様々な規制によって、建てられる面積が決まってきます。現時点でその条件いっぱいのボリュームが建っていると、次に建て替える時も、今以上には建てられない。という事は既存建物の解体から新築までの全ての費用を現区分所有者で出さなければならず、高齢化した管理組合で、現実的にそれはかなり難しい事です。稀に実現する場合がありますが、元々敷地に余裕があり、建て替え後に大幅に戸数が増える事で売却益が発生し、従来の住民は僅かな手出しで新しいマンションを手に入れられる、という場合に限ります。

だからこそ、いまある建物をしっかりと守り、資産価値を維持していく必要があるのです。





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